七夕



空を見上げても、そこにはただ闇が広がるだけ。
昼間は晴れていたのにな、と徐々に湿っていく空気に八つ当たる。

無性に悲しくなって、自分の部屋へ入って障子を思い切り閉めた。
ばたん、と響く音が闇夜に吸収されて
辺りはしんとして、より静まったみたいに感じた。

バカみたいだ。

誰にも内緒で書いた短冊の願い。
叶うことなどないと分かりながらも、書かずにはいられなかった。
傷つくことなんか目に見えているのに、それでも何かに縋りたくて。

障子の外から、しとしとと雨の降る音が聴こえる。
降り出してしまった。もう、望みはない。
望みなど、初めからないというのに。

「……良かった」

これで手の中の願いは叶わない。
確かめるように手を開いて、淡い青の短冊に書かれた文字を読む。

「……ばっかみてえ」

これで良かったと思う。

七夕の夜、空は闇。雨に濡れている。
誰の願いすら届かないだろう。

綺麗な天の川を見て泣くよりは、死ぬほどマシだ。
どうせ叶わないのならば。

バカみたいだ、ともう一度呟いて、
握りしめた短冊を破り捨てた。


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会いたい、だなんて。


2007.7.7
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